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LLMOpsとは? MLOpsとの違いや生成AIの評価について解説

  • 執筆者の写真: KAMON Nobuchika
    KAMON Nobuchika
  • 3月27日
  • 読了時間: 9分

更新日:4月25日


LLMOps とは?


LLMOps(Large Language Model Operations)とは、大規模言語モデル(LLM)を利用した生成AIアプリケーションの開発から運用、改善までを一貫して管理するための考え方や仕組み(フレームワーク)です。多くの企業では、自社でモデルをゼロから構築するのではなく、OpenAI、Google、Anthropic などが提供する基盤モデルを活用し、プロンプト設計やファインチューニング(微調整)を通じて目的に合った生成AIアプリケーションを開発しています。LLMOpsは、こうした開発・運用プロセスを効率化し、品質管理やガバナンスを実現する上で重要な役割を果たします。



LLMOps のメリットとユースケース


LLMOps は「便利ツール」ではなく、品質・コスト・リスクを同時に最適化する運用メソドロジーです。以下はその主なメリットの例です。


  1. 開発スピードの加速

    - プロンプト管理、モデル、確立されたテスト手法により、開発効率の向上

    (プロンプト管理に関しては こちら のブログを参照)

  2. 品質の継続的改善

    LLM as a Judge、 ユーザーフィードバック、 Human Annotationなどをワンループで運用し、リリース後の精度向上を仕組み化

  3. コスト最適化

    Trace単位でトークン数と請求額を可視化、高コスト箇所を改善

  4. ガバナンスと監査対応

    全入出力・モデルバージョン・評価結果を一元ログ化し、生成物の説明責任 (Explainability) を担保、有事の際におけるトレーサビリティの確保

  5. チーム横断コラボレーション

    データサイエンティスト/エンジニア/業務担当が 共通ダッシュボード で指標を共有し、改善案を合意形成しやすい

  6. スケールと未来対応力

    新モデル登場やワークロード拡大時も、同じパイプラインにプラグインするだけで リスクなく横展開

  7. ROI の可視化

Trace と KPI を結びつけ、「生成 AI がビジネス成果を生んでいるか」 を定量的に証明


またユースケースとしては、以下のようなものが想定されます。


  • 生成AI導入によるカスタマーサポート平均対応時間の削減

    • 生成AIの処理を可視化し、回答を継続的に評価、改善することで人件費削減

    • あわせて顧客の待ち時間も削減し、顧客満足度を向上

  • 法務ドキュメントレビュー の時間削減

    • 一次評価を全て生成AIで実現しつつも、発生するエッジケースに対して、Trace から LLM as a Judge による誤りケースを検出し、専門家レビューによる改善

  • パーソナライズド広告コピー生成クリック率 の向上

    • 効果的なプロンプト をTraceのTagで判別し、A/Bテストを実施し、プロンプトを改善しつつ、効果的なものを瞬時に本番適用


LLMOps を導入せず当初の仮説だけでリリースした場合、こうした効果は期待できず、ビジネスにおける ROI も限定的なものとなってしまう恐れがあります。



MLOps と LLMOps の違い


従来のMLOps が一般的な機械学習モデルの開発と改善を対象とするのに対し、LLMOps はLLM を活用した生成AIアプリケーションやエージェント特有の課題に対応するためのものです。その主な特徴として運用プロセスにおいてモデルの出力に対するユーザーからのフィードバック収集や自動的な評価の実行結果などを改善に活用することが重視されます。これらの結果がプロンプトや自動評価自体の改善、モデル選定や評価データセットの構築などに活用されることになります (具体的なプロセスは後述)。



LLMOps とGenAIOps の違いと関係性


LLMOps と似た用語にGenAIOps(Generative AI Operations)があります。GenAIOps は、テキストだけでなく画像、音声、動画などの生成モデルを含む、あらゆる生成AIを対象とした、より広範な概念です。一方、LLMOps は生成AIの中でも特に「大規模言語モデル(LLM)」を利用した言語生成にフォーカスしています。つまり、LLMOps はGenAIOps の一部分(サブセット)と位置づけられ、特に言語生成に特化したプロセスが重視されます。


LLMOps は GenAIOps の一部
LLMOps は GenAIOps の一部

生成AIアプリケーションのデプロイ、その後の課題


IT部門やDX部門などにより開発・導入された生成AIアプリケーションが、通常のシステムと同様に最初から100% の品質でユーザニーズを満たすことはまずありません。そして、アプリケーションの使われ方、ユーザーフィードバックの獲得、定量的な評価などが何もない状況であれば、当然その状況は永遠に改善されません。結果として経営層がそのプロジェクトにROI を見出せなければ継続することが難しくなるかもしれません。




生成AI は一見すると正しいように見える出力をする特性があり、出力結果はそのまま使えないが必ずしも全てが間違えているとも言い切れず、残念ながらユーザはモヤッとした不満を心に抱えることになります。その状況で仮にIT部門がアンケートを定期的にとったところで、低い解答率で曖昧な回答を受け取ることになり、具体的な改善に繋げることは難しいでしょう。


このような問題を解決するために必要な手法が LLMOps です。


LLMOps に必要な構成要素


生成AIを利用したアプリケーションやエージェントの継続的な改善を実現させるためのLLMOps には以下のような構成要素が含まれます。


  1. Tracing

    ユーザ入力とモデルの出力 (Trace)の取得および保管、および処理内容の可視化

  2. プロンプト管理

    生成結果の品質向上のためのプロンプト修正、テスト、評価など

  3. ユーザ フィードバックの取得

    ユーザがどの処理に対して、どのような評価をしたのかを具体的に収集・管理

  4. Human Annotation

    業務の専門家から見て、適切な回答をしているのかどうかの評価

  5. 自動評価

    LLM as a Judge などを活用して、3や4の効率化・一次評価に利用

  6. Dataset管理

    ユーザの実際の入力などをデータセットとして管理し、テスト資材などのために管理

  7. 利用傾向の把握と分析

    コスト, プロンプト, モデル, ユーザ, アプリケーションなどの様々な観点で、どのような傾向があるのかを分析


生成AIアプリケーションはこれらのプロセスを通じて継続的に改善し続けることで、初めてビジネスに価値を生み出すことが可能となります。続いて、この中から重要な要素であるTracingと評価 (ユーザーフィードバック, Human Annotation, 自動評価) に焦点をあてて、説明をしていきます。


Tracing - LLM アプリの“挙動”を可視化するバックボーン


Tracing (または Trace ) はユーザーのインプットと LLM のアウトプットをまとめ、どのモデルを使い・何を参照し・何秒かかり・いくらコストが発生し・どんな結果を返したかなどを時系列で残す仕組みです。このTraceを軸に評価 (Evaluation) やデバッグなどが行われることから、LLMOps におけるバックボーンと言えるでしょう。以下はTracing によって得られる一般的なパターンです。

ビジネス課題

Tracing が解決すること

品質管理

失敗した Generation をクリックし、入力→Retrieval→出力を時系列で確認

“Hallucination が起きたのは Retrieval が空集合だった”と即判明

コスト抑制

Trace 単位でトークン数と課金額を自動記録

月次レポートで高コスト プロンプトを可視化し、短縮を提案

SLA/レイテンシ

Span 間のタイムスタンプでボトルネックを特定

「埋め込み検索が 600 ms → Pinecone にインデックス分割」で改善

A/B テスト

異なるプロンプトを与えたTrace毎に結果を比較

プロンプト v2 の CS 工数削減率が +12 % を確認

Tracing は LLM アプリの全イベントを “1 本のストーリー” に束ねることで、

  • 品質・コスト・パフォーマンスをワンクリックで照会

  • 評価(LLM as a Judge、Human Annotation、User Feedback)との橋渡し

  • プロンプトやパラメータが与える影響の確認

  • 監査/セキュリティ要件への対応


と言ったLLMOps の道筋を作る重要な役割、最初の一歩の役割を持ちます。

これにより Tracing → 評価 (Evaluation) → 改善 のループが完成し、GenAIOps/LLMOps の継続的改善が“仕組み”として回り始めます。



生成AI においては評価が鍵


Tracing がされている前提で、LLMOps の構成要素の中で、特に重要なのは "評価" です。

生成 AI アプリケーションは、モデルが生成したアウトプットが実際にユーザーの課題解決に役立っているかを常に確認し、改善し続けることでなければ ROI を証明できません。


特に GenAIOps/LLMOps では、

  1. オンライン指標(ユーザー行動)

  2. オフライン指標(定義済みデータセットによるテスト)

  3. モデル/人による定性評価

これら3つを組み合わせ、素早くループを回すことが成功の分水嶺になります。


1. ユーザーフィードバック:最も信頼できるオンライン評価

評価例

実装方法

オンライン


👍/👎、5 段階評価、自由コメント

UI コンポーネントはできる限りワンクリックで完結させる

オフライン


クリック率、編集率、滞在時間

既存の分析基盤と Trace ID をひも付ける

オフライン


CS 工数削減、処理時間短縮

業務システム側で自動計測 → Langfuse の score API に送信

Langfuse では数値・カテゴリ・真偽値いずれのフィードバックも Trace 単位で保存、Exportすることが可能です。またダッシュボード上でスコア分布も即時確認できます。


2. Human Annotation:ドメイン知識を注入する評価の“最後の砦”


Langfuse には以下の図のような極めて分かりやすい Human Annotation 専用の UI があり、次項で説明する自動評価でスコアが悪い Trace を Queue に入れ、Queueにいるそれらを簡単にドメインエキスパート (業務の専門家) が評価することができます。


実際の INPUT と OUTPUT をみて、手動でカテゴリや点数などで専門家が判定(評価軸は独自設定が可能)
実際の INPUT と OUTPUT をみて、手動でカテゴリや点数などで専門家が判定(評価軸は独自設定が可能)

3. 自動評価──“LLM as a Judge” で 指標 を ビジネス価値 に変換する


BLEU/Rouge のような機械翻訳系メトリクスは「表層的一致」を測るには有効ですが、


  • 本当にUX に寄与しているのか

  • 業務 KPI(例:チケット処理時間、法令順守率)に直結しているのか


という問いには答えてくれません。


ここで鍵になるのが LLM as a Judge――LLM 自身を “審査員 (Evaluator) ” として使い、独自プロンプト でタスク固有の評価軸を採点させる手法です。



なぜ「独自プロンプト評価」が効くのか?



  • 業務コンテキストを埋め込める

    業界用語や必須の条文のチェックなど、業務独自の内容を反映可能

  • 評価基準の透明性

    プロンプト の中に基準を明文化 することで、 ドメインエキスパートやステークホルダーも理解がしやすい

  • 定量化が難しい基準も自然言語で入れることができる

    ビジネスに相応しいか、似合っているか、多様か ... などの基準を作ることが難しい内容もプロンプトが可能(精緻化した方が効果は高くなることがあります)


Langfuse は最初から評価用テンプレートも用意されており、そこにさらに独自の基準を日本語で追加することができます。こうした自然言語で半コード化された評価基盤 を「作る→回す→直す」のループに緊密に組み込み、Traceに紐づけることで、改善対象を明確にすることで、改善を具体化・高速化させることが可能になります。


「メトリクスでは不十分な評価も、LLM 使うことで “自社専属の 一次QA チーム” を構築」

──Langfuse はその最短ルートもあわせて提供します。



まとめ|LLMOpsはLLM活用の鍵


LLMOps は、LLMをビジネスに導入し、その価値を継続的に生み出すために不可欠な運用手法です。特に、モデルプロバイダが提供する強力な基盤モデルの活用が一般的となった現在、LLMOps なしでの効果的な運用は困難と言えるでしょう。

その中でも特に、評価が改善の鍵となり、Langfuse は世界中で使われている便利なUIや

機能を最初から備えています。ご興味がある方は、あわせてご確認ください。


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